添加物について(その2)
(その1)からの続き
複合摂取の不安
一括表示の罠
スーパーやコンビニなどで買った食品の原材料表示を見ると、使われた添加物の種類の多さにはビックリです。1つの食品で20〜30種類もの添加物が入っているものもあるようです。「乳化剤」、「香料」などとして同じような目的で使用された複数の添加物をまとめて表示する一括表示という制度があるため、実際にはもっと多くの種類の添加物が使われている場合がほとんどです。限られたスペースに使用した添加物名をすべて書くことは不可能ということもありますが、裏を返せば、添加物使用を出来るだけ少なく見せたいと考えるメーカーのための制度といっても過言ではありません。
全部調べるのは無理?!
このように1つの食品に膨大な種類の添加物が含まれている場合が多いのですが、そもそも添加物は1つ1つ個別に認可されているということを忘れてはいけません。つまり複数の添加物が同時に使用されたケースについては想定外ということなのです。今どき1種類しか添加物を使っていない食品などありますでしょうか? 確かに認可された添加物は何百もの種類があるので、その中から任意の2種類、3種類、4種類・・・を選んで複合的な毒性があるかどうか調査するなどという話は、組み合わせが天文学的な数になってしまい現実的ではありません。とうてい無理な話です。調査実験もされず野放し状態になっているのに、また新たに添加物が認可されてゆくことに私は非常に恐怖を覚えます。皆さんはどう思いますか?
添加物にも食べ合わせ?
「天ぷらとスイカ」、「うなぎと梅干し」など“食べ合わせ”という昔からの言い伝えがあります。私は以前から、添加物にも食べ合わせは絶対にあるはずと思っていました。条件が整うと化学物質同士が化学反応して全く別の物質に変わってしまう、ということを昔学校で習いましたし、実験もしたように記憶しています。食品の中でもこうした化学反応がおきる可能性はゼロとは言えないと思っていましたが・・・
不安はやっぱり的中!
2006年にイギリスで、「2つの添加物が化学反応をおこして、発ガン性の物質を生成する可能性がある」という発表がなされました。具体的には、「清涼飲料水中に含まれる、保存料としての安息香酸と酸化防止剤としてのアスコルビン酸が化学反応して、発ガン性の高いベンゼンが生成される」というものです。この発表を受けてドイツやアメリカ、オーストラリアなども調査結果を公表しています。日本でも2006年7月28日付けで厚生労働省から「清涼飲料水中のベンゼンについて」と題して報道発表されており、市販の清涼飲料水1製品が回収・製造中止となったようです。このベンゼンは工業製品の製造時によく使われている物質で空気中にも存在するのですが、強い発ガン性が指摘されています。ただ、ベンゼンの含まれた清涼飲料水を飲んだとしても、直ちに健康被害が出るということではないようですが、出来ればこのベンゼンは摂取したくないというのが本音でしょう。
一方で、添加物があることによって食品が非常に安く手に入るようになった、日持ちするなど便利になった、というメリットが生まれたことも事実です。忙しい現代人のライフスタイルに受け入れられるべくして合成添加物が浸透していったように思います。色々な価値観がありますので、食品は安いことが第一条件だ考える人も多いでしょう。ですから盲目的に合成添加物は悪だとは言い切れないと思います。合成添加物とはどのようなものか、そしてメリットとデメリットについても出来るだけ多くの人が理解できるように情報開示が必要となってきます。
合成着色料でしか季節感が出せない?
和菓子(特にお茶席用の和菓子)は季節を表現するために「色使い」も重要な役割があります。春であればピンク色、秋であればオレンジ色や黄色などです。当店は合成添加物は基本的には使用しないのですが、着色料については例外とならざるを得ません。必要な時にのみ、ごく少量合成着色料を使用し、そして色づけは淡くうすい色にしています。うすい色であれば着色料を入れる量が減ることになりますし、お菓子自体も上品に仕上がります。この合成着色料は赤○号、黄○号などと表示されるものなのですが、石油から合成される添加物なので、知識のない方でも本当に安全なものなのか? と疑問に思うことでしょう。諸説あってよくわからないというのが正直なところで、出来ることなら我々も使いたくないと思っています。
天然着色料にも問題あり!
天然系の着色料でも安全性に問題があるものがあったり、色があせやすく使い勝手が良くないなどの一長一短があります。当店は、天然由来のものであればすべて使いたいと考えているわけではありません。サボテンに寄生する虫をすりつぶして作った「コチニール色素」という天然系の着色料がありますが、安全性について議論する以前に、この着色料を食品に使うのはどうかと思います。どのように作られているのかを知ってしまうと、途端に食べる気が失せてしまう食品は思ったより多くありそうです。
無理に着色せず素材本来の色を生かしたお菓子が理想なので、当店はそういったお菓子が主流となっています。やはり、必要以上に濃く色付けされた食品は口にしない方が無難だと思います。
当店が使いたくない理由
トップページで、合成添加物は私の感覚で「気味が悪いから使わない」と言いましたが、こうして考えてみると、食べる人の体への影響としてマイナスはあってもプラスはないから使わないという側面もあろうかと思います。調査されていないことも多く不安の方が大きいからです。添加物の複合摂取だけでも恐ろしいのに、原材料に農薬が多く残留していたら、それもひっくるめてどんな化学反応が起きてしまうのでしょうか。「今まさに人体実験の真っ最中だ」――どこに書いてあったのか覚えていないのですが、本当にその通りですね。
我々だって消費者なんです!
ここまで社会に浸透してしまっている添加物を一切取らない食事を続けることは、ほぼ不可能に近く、完全に自給自足でないと無理です。当店も合成添加物は極力使わないというポリシーをもって取り組んではいても、残念ながら100%完璧とまではいきませんが、ここまでこだわるのには理由があります。我々も毎日の食材・食品をスーパーなどで購入して口にしていることからもわかるように、和菓子以外の食品については皆さんと全く同じように一般消費者である――つまり我々も食品を買うのに出来るだけ良いと思われるものを苦労して探し出して買っているのです。それだけ安心して買える食品が少ないということで、大いに危機感を感じているからなのです。
昔ながらの食品が懐かしい
昔の人は、長い年月をかけて発酵や熟成という方法を編み出して、目の届く範囲内で食品を加工してきたように思います。味噌であったり醤油であったり、他にも色々あります。栄養についても加工方法についても理にかなっていると思います。
ところが、最近の食品は様子が一変しています。喩えが適切かどうかわからないのですが、合成添加物の大量投下や遺伝子組み換え技術は、今までアナログ式だった食品が一気にデジタル化してしまうような恐ろしさを感じます。それくらい食品が劇的に変わってしまうのです。人間の体は昔とそんなには変わらないのに食品だけがデジタル化してしまうと、きっと近い将来体が悲鳴をあげるでしょう。やはり、まごころをもってきちんと手作りされた食品が、何の苦労もなく買えるような社会になって欲しいと願うばかりです。
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